削除請求と開示請求を併合する場合の注意

 インターネット上の書き込みについて法的対処を行う場合、まずはサイト管理者等に対して、削除請求と発信者情報開示請求を行うことが多いと思います。
 サイト管理者等に対する請求については、民事保全(仮処分)の手続きを利用することになりますが、民事保全は併合管轄の適用がないため、海外法人を債務者とする場合には管轄について若干注意が必要です。
詳しくは⇒【裁判管轄と資格証明書の必要部数】

 さて、上記リンク先の記事のように海外法人を相手とする発信者情報開示請求は、民事保全規則第6条を使い「東京都千代田区」に管轄を取得することになりますが、東京23区に所在する債権者の場合は削除請求と管轄が同一となりますので、削除請求と発信者情報開示請求を1回の民事保全(仮処分)手続きで申し立てることが可能であり、一般的にも二つの請求を併合して申立てがなされています。

 もっとも、ここ最近、発信者情報開示については裁判所の判断に従うが、削除については保全異議も含めて徹底的に争うという姿勢を明確に示す債務者(サイト管理者)が増えています。

 これを受けて、裁判所の側から削除と発信者情報開示を別の申し立てとするように指導される例もあるようです。

 申立人側の視点では、削除のために手続きが長期化する(反論の機会のための続行期日なども含む)と、手続き係属中に通信記録が消去されてしまうなど、緊急性が高い発信者情報開示請求について致命的な影響が生じる場合もあり注意が必要となります。
 発信者情報開示のための時間的余裕がない場合などは、1個の手続きで申立てができるケースであっても、あえて発信者情報開示と削除を分けて2件の申し立てを行うべきでしょう。
 申立ての個数・回数は、依頼者の方が負担する実費や弁護士費用にも影響する部分ですので、方針検討の段階でご留意をいただければと思います。