裁判管轄と資格証明書の必要部数

 インターネット上の書き込みについて法的対処を行う場合、具体的な請求内容としては削除請求と発信者情報開示請求が基本です。
 これらの請求については、一般的には民事保全法の仮処分手続きを利用することになりますが、相手が海外法人の場合、国内の債務者を相手とする場合とは異なる裁判管轄上の注意点がありますので説明させていただきます。

 日本国内に拠点を有しない外国法人を相手に行う仮処分では、削除請求と発信者情報開示請求の裁判管轄が分かれてしまい、それぞれ別々の裁判所で合計2回の裁判を行わなければならないケースが多くあるのです。

 これは、削除請求については不法行為に関する訴えとして被害者住所地に管轄が発生するものの、発信者情報開示請求については民事訴訟規則により東京都千代田区にしか管轄が発生しないためです。なお、見落としがちですが、民事保全の手続きには併合管轄の規定の適用はありません。つまり、債権者が東京23区に居住・所在していない場合には、削除と発信者情報開示を一回の仮処分で行うことはできないのです。
 
 よって、そのような場合には、一つの記事に対する請求であっても裁判を2回行うことになり、資格証明書も2通用意しなければならないのです。

 東京23区外の依頼者の方より依頼を受けて裁判を追行する場合には、取得すべき資格証明書や委任状の通数にもご留意いただければと思います。